2014-12-22

マックス・バリー『Lexicon』。良質のエンタメ



Max Barry "Lexicon"

なんとなく原書で買ったが積んであったのをようやく読んだが面白かった。ページ・ターナーという言葉があるがまさにそういう感じの面白さ。

言葉によって人間の脳をハックして意のままに操る「説得」の能力を伝える秘密組織の「詩人」たち、という設定がまずイカしていて、とある理由により彼らの戦いに巻き込まれる一般人とおぼしき男のストーリーと、それと別にサンフランシスコで奇術をやっていた少女がスカウトされ、詩人としての訓練を積んでいく物語が交互に語られていく。この2つの物語がどう合流していくかは……まあすぐ予測はつくんだけど、それでも細部をうまく隠したまま物語をドライブさせていく手法は見事。

「言葉によって人を操る」といった設定やテーマは日本SFでも類例が多い気がするけれど、えてしてメタフィクショナルで衒学的にかっこつけてしまいがちということが観測されているように思う。本書はきっぱりとエンタメであって、そういう深みは一切ない……というとけなしているようだがそうではなくて、そこにあえて踏み入れなかったところがむしろエンタメ作家としてのマックス・バリーのえらいところなのではないかな、と思った。

「神経言語学」という単語を使って「言葉はただの音じゃない、言葉は意味を伝え、脳に特定の反応を引き起こす。ある言葉や音によって、この反応を誤作動させることができる」という設定、登場する「詩人」たちが実在の詩人の名前を借りたコードネームで名乗っているところなど、異能バトル漫画っぽい雰囲気すらある。結果としては「なんか呪文を唱えると相手を操れる」という微妙に安っぽい描写になっているところも含めて、まあよろしいのではないでしょうか、という気分。

楽しく読んだけれど、マックス・バリーはこれまでもそれなりに訳されているから、本書もやがて訳されることでしょう。がんばって英語で読む意味はあんまりないです。

2014-12-17

web workers三兄弟

Service workersの仕様を説明していて思ったのだが人々はどれぐらいweb workersのことについて詳しいのだろうか。

あんがい知らない気がするので簡単に解説してみる。まあ俺もニワカです。

共通部分

ブラウザのなかで、ウェブページとはある程度独立して、ある種の処理をするためのスクリプトを実行するモノのことをworkerと呼んでいる。ようするにJSの実行環境というかVMインスタンスというか。

ブラウザのなかでふつうのJSの実行環境であるタブの中とはいろいろ違うが、
  • windowオブジェクトがない。一部のJS APIは使えないしdocumentなどは持たない。DOMツリーもさわれない
  • ただしメッセージループは持つ。windowはないがselfというやつがいてこいつを使う(self.onmessage = function() { ... } みたいな感じ)
  • タブのなかとはmessage eventで通信する。postMessageというのを送ってmessageイベントをlistenする。JSオブジェクト(というかJSONというか)やArrayBufferは送れる
ええっと、こんだけか。

Workerは、ほかのプログラミング言語だとactorとか呼ばれるものに近い。実行環境は完全に分かれているので互いに隔離されている。共有データはないのでデータはコピーするしかない。所有権を譲渡する場合は参照だけ渡す最適化もあるけどそうなると手元からは読めなくなるし、まあそういう感じ。

ああっと補足をしておくと、Workerはみな起動時にスクリプトのURLを指定する。ふつうのプログラミング言語では、関数とかそういう単位を指定するとそいつが並行実行される気がするけれど、ファイルなのでそれより独立性が高く、グローバル変数も含めて環境は一切共有されない。共通の定数とかを使いたい場合、Workerには importScripts() という関数があってほかのJSファイルを読めるのでそういうのを使うことになる。

その場でスクリプトの生成をしたり特定の関数だけ呼びたい場合は、それを文字列化してBlobを作り、Blob URLを渡すというのが作法のようである。ただまあそれもWorkerならいいけどShared Workerではどうかなあ(Service workerは仕様上、Blob URLは使えない)。

Worker

簡単に言うとスレッドみたいなやつ。new Worker(scriptUrl)で作ると新しいworkerができる。元のスクリプトの実行環境とは隔離されていて非同期に動く。そんだけ。大元のタブが所有権を持っており、そいつが消えると自分も消える。

Web workerというと、このworkerのことを指すことが多い気がする(自分もそういうふうに使っていたこともある気がする)。一番の基本形。

Chrome / Firefox / Safari / Opera はかなり前からサポートしている。IEは10からっぽい。

Shared Worker

new SharedWorker(scriptUrl)でつくるやつ。Workerに似ているんだけど、同じURLに対してはひとつのインスタンスしか作られない。ふたつの違うタブから作ってもひとつのインスタンスで共有される。タブ間で通信したりデータ共有したりするのに使える。頑張ればタブ間でコネクションの一本化とかにも使えるだろう。

共有されているが、参照するやつがいなくなったら消滅する。タブを全部閉じたりとか。

タブ間通信とかチョー便利じゃんなんでみんな使わないの、Chromeとかバージョン4から使えるよ、と思ったらIEは未サポート、Safariは途中でサポートが消滅という悲しい目にあっている。可哀想な子……。

Service Worker

解説を書いた。navigator.serviceWorker.register(scriptUrl) で登録する。いっけんShared workerに似ているけれど、違いとしては、
  • 登録元のタブと独立した生存期間を持つ。タブが閉じてても生きてることがある。
  • フェッチなどオフライン処理に関係したイベントやAPIを持つ。したがってスクリプトの側からはオプショナルな機能として実現できる。
といったところ? それにほかの面白機能のベースになるもよう。

先進的すぎてChromeでもまだ安定版では使えない、Firefoxもフラグに隠されている、ほかのブラウザはやる気があるのかどうかすら不明ですが、面白いと思ってる。

Chrome40にservice workersがきた

Chrome 40になってService workersが来たらしい。デモを動かしてみたり自分で書いてみたりして紹介記事でも書こうかなと思っていたが、 +Hajime Morrita はRebuild.fmに出演して紹介してしまったし、ほかにもすでにいくらか紹介記事が出始めてきた(たとえばhttp://qiita.com/kinu/items/2abd61b4390f9bbaffc9)。賑やかしにと自分もスクリーンキャストの動画も撮ってみた。

ここではデモの補足として、Service workersってどんなものなのかをふんわり考えてみる。

Service workers とは

って項目を書いたのだがこの説明が難しい……。新しいウェブのAPI、だけだとだからなにって感じ。Service workersはweb workersの一種なのだが、って説明しはじめると泥沼に嵌りそうだ。

Service workersでブラウザの機能として大きいと思うのは、タブと独立して動くJSの実行環境を手に入れるということだと思う。

Web workersというのはJSのスレッドみたいなものなので、普通にタブのなかのスクリプトから作られるし、タブが閉じられると消える。複数のタブで共有されるshared workerというのもいるけれど、これもタブが全部閉じたら消える。どちらもタブに従属している。

それと違い、Service workerはブラウザにインストールされる。さいしょにインストールするには、登録するページを読まないといけないけれど、登録が済んでしまえばページとは関係なく動作する(細かい補足になるが、動作するといっても、つねにプロセスを起動しっぱなしにするということではない。必要に応じて起動する)。で、ウェブページやウェブアプリと協調動作していろんなうれしい機能を提供する。

そういうバックグラウンドサービスというのは、実はこれまでブラウザにはなかった。拡張機能によってそういうのはなんとかしてきた歴史があったが、そうした無理を解消しつつ標準化していくのがService workersなのかなというのが個人的な認識だ。

Service workersの役目とスコープ

Service workerはウェブのリクエストを取り扱う。そういう意味では、少し前に話題になったフェッチAPIと関係がある。

リクエストの取扱範囲はスコープで制御される。デフォルトは登録元のサイトのトップで、これはようするにサイト全体がひとつのウェブアプリになっていてservice workerはそのウェブアプリに対して動作するということが念頭にあるのかなと思う。ただもちろん、登録時のオプショナル引数でそこからサブディレクトリに制限をかけることもできる。

取り扱い範囲のフェッチリクエストが来ると、まずService workersのfetchイベントハンドラを駆動する。Service workerはそのイベントハンドラを勝手に横取りして自分で勝手にレスポンスを作ってもよい(これがデモでやってみた事例)。なんにもしなければ普通のリクエストに戻っていく。

ただ、スクリーンキャストのなかでぶつぶつしゃべったように、ふつうはダミーデータを作ったりすることは少ないはずだ(ネットワークがつながってないときにエラーメッセージを渡すというのはあるかも)。ありがちなサンプルとしては、
  • 画像やCSSなど静的なデータをキャッシュしておき、ネットワークなしでもページをロードできるようにする(オフライン化)
  • twitterのフィードフェッチなど、複数タブを開いていると無駄になりそうなコネクションの一本化
といったところだろう。この辺はService worker専用のキャッシュAPIなどを使うことになる。と思う。

アプリのオフライン化についてはapplication cacheというAPIがこれまでもあったのだけど、残念ながらいろんな事情からマイナーな仕様にとどまっている。application cacheと比べると、簡単な事例についてはService workersのほうが書く量は増えることになるが、柔軟性が圧倒的に高く管理しやすいので、いろいろ考えるとService workersのほうがいいんじゃないかという気がする。application cacheのつらみはこの記事でよく解説されている(らしい。ごめん読んでない)。

Service workersとevent pages

Service workersの動作や仕様を眺めているとChrome拡張機能のevent pagesと近しい印象を受ける。

Chrome拡張機能にはいろんな機能があるんだけど、background pagesというのがあった。拡張機能はページにくっついたり、ポップアップになったり、自前でタブを開いたりするのだが、ユーザに見える部分とは別にいろんな処理をまとめるバックエンドがあるといろいろ便利で、それがbackground pagesとなる。拡張機能やChromeアプリを作るとき、ユーザに見える部分は単にHTML/CSS/JSでシンプルに作って、イベントハンドラからbackground pagesにメッセージを投げていろんな処理や拡張機能用のAPI呼び出しを一本化したり、といったことに使われてきた。

background pagesは便利だったんだけど、問題がひとつあった。というのは、拡張機能をインストールするとそのbackground pagesのプロセスがずーっと起動しっぱなしになってリソースを無駄遣いするのだ。そこで導入されたのがevent pagesで、ようするに「background pagesなんだけど、ブラウザは適当にプロセス止めてもいいっすよ」というフラグをつけたものと思えばいい。

event pagesはインストール時や初回起動時に実行され、イベントハンドラを登録する。そういうイベントが発生したときや、また拡張機能のUIからbackground pageにメッセージを投げようとすると、プロセスが起こってメッセージを処理し、しばらくするとプロセスが勝手に止まる。

Service workersは、このevent pagesをウェブ流にうまく表現したもの、ということができると思う。Chromeの場合、プロセスを適当なタイミングで閉じて、フェッチが発生したりページからpostMessageしたときだけプロセスが起こるというのもいっしょだ(よく知らないけど実装もけっこう流用できていると思う)。拡張機能を書いてて便利だったことがいろいろできるようになる。はずである。

Service workersの現状と今後

最初に書いたようにChromeでは40から使えるようになった(39でもコマンドラインフラグを指定すれば使えるようになっていたが、フラグフリップしたようだ)。ほかにサポートを表明しているのはFirefoxだが、こちらはフラグがないとまだ動かないらしい。Operaはよく知らないけど、なかみはBlinkなので対応は進むと思われる。それ以外のブラウザは対応を表明していない(Firefoxが支持しているというのは面白いところなんだけど……まあそういう深読みはここでは避ける)。

そういう状況なので、いますぐService workersを使わないとヤバイ、とか、もう準備万端なのでバリバリ使うべき、という話とは程遠い。が、Service workersはキャッシュやオフライン化をオプショナルに、つまり「できる環境でだけうれしい」程度の機能として提供しやすいという面がある。そういう面では、Chromeの安定版で使えるようになるあと数週間後には、触ってみてどんなもんなのか試してみるぐらいの価値はあると思う。

ただ仕様はまだドラフト段階なので、細部は変わる可能性はある。詳しくはgithubのissueにて熟知すべし。なのかな。

なお、Service workersの仕様は、それなりに長いんだけど、機能としては比較的シンプルだということに気づく。ようするに、基本的にはフェッチイベントを受け取ってキャッシュしたデータをサーブする、という機能に特化していてそれ以外の用途にはあんまり向いていない。ほかにもこんなことができたら面白そうなんだけど、という夢みたいな話はあまり入っていない。

たとえばサーバからプッシュ通信を受けつけることができるとしよう。Facebookで誰かがメッセージを送ったらサーバプッシュが届いて、それをservice workersが受けて、タブが開いてなくても通知が出せる、となったら、かなり夢が広がる気がする。Google calendarの通知とか、いいかげんタブ開いてなくても教えてほしい。そういうのはまさに拡張機能が受け持っていた機能だったけど、ブラウザごとに作るのは不毛すぎる。

ほかにも、拡張機能のevent pagesにはchrome.alarmsというAPIがあって、定期的に処理するようなイベントなんだけど、これもService workersには含まれていない。1分ごとにフェッチして変化があったらページに通知して……みたいなやつ。window.setIntervalがあればいいじゃん、て思うかもしれないけれど、それは普通のJSのAPIなのでプロセスが止まったら不都合が生じてしまう(コードの意味が変わってしまう)ため、プロセスを止められなくなる。別なAPIで対応してあげる必要がある。

実はこの辺も議論されている。プッシュ通知はpush APIという別なAPIが提案されているし、定期的にservice workerを起こすというのはbackground sync APIという仕様になるようだ。

というあたりの状況からすると、service workersはいわば導入編であって、これを軸にこれからいろんな面白機能が入ってくるのかなと期待している。そういう意味でもservice workersはいろいろ注目のAPIだと思う。

謝辞

このブログの記事、先週頭ぐらいに書いていたドラフトがあったのだが、いろいろあって完全に書き直してしまった。もとの文章と全然違っちゃったけどそちらにコメントや訂正をいただいた+Eiji Kitamura+Hiroki Nakagawaありがとうございました。むろん、間違いや勘違いの責任は向井にあります。

参考資料
  1. Chrome 40 で今すぐ ServiceWorker を試す: http://qiita.com/kinu/items/2abd61b4390f9bbaffc9 
  2. Service Workers spec: http://slightlyoff.github.io/ServiceWorker/spec/service_worker/
  3. Service workers samples: https://github.com/GoogleChrome/samples/tree/gh-pages/service-worker
  4. AppCache: https://html.spec.whatwg.org/multipage/browsers.html#offline
  5. Chrome extensions event pages: https://developer.chrome.com/extensions/event_pages
  6. push API: https://w3c.github.io/push-api/
  7. Background sync: https://github.com/slightlyoff/BackgroundSync/blob/master/explainer.md

2014-11-23

今季のUSのドラマその後

一言でまとめるとGOTHAMが面白いです。

GOTHAM

5話まで見たがマジで面白い。刑事物とかアクションとしてはアラがあるかもしれないけれど、物事の裏で進行するファルコーネとマローニの対立がストーリーをうまく回している。これに加えてウェイン財閥も綺麗なわけではないようで……。さらにギャング二人の対立構造のなかでペンギンが立ちまわる、という筋立てのため、ほとんど主人公的な立ち位置になっててある種の立身出世ものになっているのが良い。

逆にそれ以外の原作ヴィラン(リドルとかキャットウーマンとか)は今のところ存在感薄いなあ……。これからいろいろあるのだとは思いますが。

刑事物にありがちな「こんな凶悪事件ばっかり起きてて大丈夫なのかこの街」という疑問も「でもゴッサム・シティだからなぁ」で解決できるのは正直便利だなと思いました(笑)。

THE FLASH

まあまあ面白いけど、ヒーロー物としては正統派すぎてふつう。評価高いのなんででしょうか……。日本だと仮面ライダーシリーズ的な立ち位置として思えばまあこんなもんかなと思う。自分はまあそういうのも好きなので良いといえば良いです。

Agents of S.H.I.E.L.D. シーズン2

いまのところ期待はずれ。第一期のラストの、『キャプテン・アメリカ:ウィンター・ソルジャー』上映中と重なったことをふまえた展開は神がかっていて良かったのになあ。

第一期では主人公たちはS.H.I.E.L.D.という巨大組織のある種独立愚連隊的なもんだし、敵も謎めいていたのが良かったわけですが、今回はもう中枢だし、敵の正体もはっきりしていてつまんないですよ。まあ他の展開を期待しつつ待ちたいところ。

映画が出てきたらクロスオーバーで面白いのかもしれませんが。エイジ・オブ・ウルトロンが来年5月で、それまでほかの映画ないんだっけ? そしたらクロスオーバーはなしか。残念……。

乾緑郎『機巧のイヴ』



機巧のイヴ

ちょっと珍しいタイプの時代小説風SF。スチームパンクというか、からくり細工とSFの組み合わせパターン、なのはそこだけ捉えるとありがちなんだけど、こういう世界観はあまり見ないかも。なかなか良かった。

牛山藩に使える江川仁左衛門は、幕府の精錬方手伝、釘宮久蔵を訪ねた。自分の想い人と瓜ふたつの機巧人形を作ってもらうために……という第1話め「機巧のイヴ」は読んでいて妙な既視感があるなぁ……と思ったらそういえば『年間SF傑作選』にて既読でした。機巧細工で人間さえも模倣できるスチームパンクの世界観の面白さと、ちょっと捻った結末が良い。

以降はこの釘宮久蔵を狂言回しにして、同一世界で機巧+時代小説な組み合わせの連作短編全5話という構成。ただし後ろ3話はわりとひとつながりのストーリーになっているので、第2話だけ少しすわりが悪いかな……一応ラストにまでもつながる展開ではあるんですが。

改めて1話めと比較すると少し違う感じになっていませんか?という文句も少し言いたくなる面はあって、「機巧のイヴ」が単体で面白いのと比べると後半は少し弱いとも言えるけれど、徐々に世界観が明らかになっていく後半の展開もこれはこれで別な面白さがあって良いと思いました。

オチは少し弱いかな。

2014-11-20

シリコンバレー、わりとさむい

何度か似たようなことを書いたことがある記憶もあるのだけれど、まあ重複上等ということで。

なんか最近けっこう寒いのです。とくに朝晩。あと雨降ったりもする。今も降っている。もちろん、寒いといっても大したことはなく、東京の11月と同じくらいの気温。たとえば水曜日の天気は雨、最高気温18度で最低気温が9度(ともに摂氏)という感じなんですがね……。

なんというかどうも、ベイエリアは(サンフランシスコを除いて)だいたいいつも晴れてて暖かく過ごしやすい、というイメージがあると思うし(こないだrebuild.fmの66 aftershowでもそんなこと言ってたし)、そのイメージがいまだに自分の中にも残っているので、なんだか毎年ムダにびっくりしている感じ。わざわざ驚くまでもなく、この季節になると実はそこそこ寒いのだった。

ただ、この辺はこれ以上寒くはならないので、これから本格的に寒さを迎える12月から2月くらいにはかえって過ごしやすいように思えるかなと思います。

統計を見てみると

というだけではつまらないので軽く統計を眺めてみると、Wikipediaに記載されているサンノゼ市の気候統計によると、1981年から2010年までの統計で11月の月間平均最高気温は摂氏17.9度、平均最低気温は7.8度となっていて、ここ数日の天気がまさしく平年並みであることを教えてくれました。そっかこんなもんか。

なお東京も同じくWikipediaから転載してみると、同じくで11月の月間平均最高気温は16.9度、平均最低気温が9.9度となっています。朝晩はむしろ寒いぐらいだなあと思っていたけど、やっぱり東京よりやや寒いんですね。逆に日中は少し温かい。

サンノゼでは12月と1月は同統計によると最高14度強、最低5度強となり、2月には11月と同程度に回復するようなので、これからもう少しだけ寒くなるというのが正確なところ。東京の気候は12月が5.1-12.4度、1月が2.5-9.9度、2月が2.9-10.4度、3月でも5.6-13.3度と推移するので、この辺の期間は東京よりはずっと過ごしやすいということになるのかなと。

ちなみに夏を比較すると、最高気温はけっこう暑いのですが(とはいえ8月でも最高気温の平均は30度を超えないので、真夏日にはほとんどならないでしょうが)、大きく違うのは最低気温で、8月でも最低気温は14.6度となっており、熱帯夜のような日がありえないということがわかります。最低気温14度程度というのは東京だと5月か10月くらいの水準です。ようは春か秋くらいの感じ。あと基本的に雨が降らず乾燥しているので不快指数的な違いは大きいですね。

雨季と降雨量

ついでに「いつも晴れている」ということについても書いておくと、ベイエリアは夏はカラッといつでも晴れていますが冬が雨季といわれていて、そこそこ雨が降ります。雨はそんなに珍しくありません。

前掲の統計にも降雨についての情報がありますが、11月における雨の日は平均で7.2日。4日に1日くらいは雨ふってる感じです。12月から1月は10日を超えているので3日に1回ぐらい雨が降っています。月間10日雨って東京の5月ころと同じぐらいの頻度です。けっこう多いな。

ただ降雨量に着目すると、たしかにほぼゼロな夏よりは多いですが、11月で降雨量42.7mm、12月66.3mm、1月78mm、2月79mm、3月64.5mmといった具合の推移で、これは日本人的な感覚としてはかなり少ないと思われます。

たとえば、東京は冬場は乾燥しますが、それでも降雨量は50mm強で推移していますから、雨季でそれより少し程度の雨量というのは、この辺がいかに乾燥しているかわかりますね。東京の6月の降雨量は平均でこの3倍ぐらい(167.7mm)あるようです。

じっさい、雨といっても霧雨か小雨といった程度であることが多いですし、それなりの強さの雨だとラジオなんかではストームだとか言っております。雨の感覚は狂う。

ちなみに雪は降りません。こちらに来て3年目、まだ市街地での雪は見たことがないですし、雪は降らないと聞きます。いま前掲Wikipediaを見てみたら、サンノゼ市で地面に雪が残る程度の降雪の一番新しい記録は1976年2月5日だそうで。ほう。

まとめ

比較するといろいろ面白かったですが、11月くらいの気候は東京とかなり近いようですね。なお東京と比較したのは自分が住んでたからなので、他の日本の都市のことはよくわかりません。それともちろん、統計は統計なのであって個別な例外はいっぱいあります。

ところで完璧に余談ですが、先日寒いなあと家に帰りがてら、アパートの住民らしき女性が水着の上にパーカーだけ羽織って出かけるのとすれ違いましたが、外もすっかり暗くなってましたがあれからプールで泳いだんですかね……寒さに強い人間の考えることはようわからん……

2014-11-17

イスラム系スーパーヒロインの新生『ミス・マーベル』



Ms. Marvel Volume 1: No Normal

なんかの記事で見かけて面白そうだったので買ってみたが、なかなか良かった。

アメコミヒーローシリーズの『ミス・マーベル』が4代目になって新しくなった第1巻なんですが、大きな特徴は主人公がパキスタン系でムスリムの家庭の女の子であること。

カマラ・カーンはジャージーシティに住む16歳のふつうの女の子。ムスリムの家庭ではあるけれど、彼女じたいは伝統や慣習よりはアヴェンジャーズなどのコミックが好き(ファンフィクを書いたりしてる)。ただ、厳格な両親やムスリムとしての生活を受け入れた兄はそういうことに理解がないし、学校の白人の友達たちからは少し疎外感を味わっていて、週末のムスリム系の学校(補習校?)でも厳しい先生とはいまひとつそりがあってない。

ある日、親のいいつけを破って友達に誘われて夜のパーティに行った帰り、不思議な霧の中で彼女は幻覚を見、自分の姿形を自由に変形させる超常能力を得る(わけわからんなーと思ったけど、この霧じたいもInhumanityというマーベルユニバース全体のクロスオーバーシリーズの設定らしい)。幻覚に見えたミス・マーベル(初代)を見ながら「あなたみたいになりたい」と思った彼女は、ほんとうにそういう姿形に変化し、人助けをしたことから、人々のあいだにミス・マーベルの都市伝説が生まれる……といったものがオリジン。

褐色の肌で黒髪なパキスタン系のアメリカ人、しかもムスリムというスーパーヒロインはそれだけでもセンセーショナルな題材だし(マーヴェル・コミックスではタイトル持ちヒーローでムスリムは初とのこと)、白人リア充たちにちょっと憧れつつ彼らのようにはなれないことを思い知らされたり、なかなか攻めたテーマ設定にも思える。

ただ実際のところは、厳しい親の抑圧と自己の関係、理解のない家族や友だちとの人間関係、学校でもどちらかといえばスクールカースト下位なキャラクターが突然スーパーヒロインになるといった設定など、戦うヒロインものとしては比較的普遍的な(言い方をかえるとわりとふつうの)テーマを描いていて、そこが主眼なのかなという印象。ムスリムといった彩りはこうしたテーマとわかちがたく結びついているけれども、そこだけをセンセーショナルに取り上げた作品ではないなという感じ。

アートワークもなかなか良くて、アメコミみたいなガチムチな感じから離れて線もおとなしめ、マンガっぽい表現もあるし、特殊能力として体のあちこちが変化したりするのがディフォルメぽい演出になっていたりもして、良い感じです。