2013-08-29

風野春樹『島田清次郎 誰にも愛されなかった男』



島田清次郎 誰にも愛されなかった男 読みました。いやー面白かったですよ。読みはじめると途中で休むこともできずその日10時間近くの予定を滅茶苦茶にして一気に読んでしまった……というほどではないですが、わりとすぐ読んでしまいました。

島田清次郎は大正時代の作家で、弱冠二十歳で刊行した自伝的小説『地上』が大ヒット、シリーズ4冊で累計50万部以上というすごい記録を出し天才と呼ばれるもスキャンダルによって失墜し、のちに精神病院に入院してそのまま31歳の若さで肺結核で亡くなり、いまではほとんど知られていないという、ものすごい経歴の御仁。この本は、様々な資料にあたりつつ、そんな島田清次郎の一生を丹念に追いかけて描き上げた伝記です。

この本の面白さというのは、もちろん第一には島田清次郎という人間じたいの面白さ、そのあまりにも数奇な人生というのが挙げられます。何しろ副題が「誰にも愛されなかった男」というぐらいで、誇大妄想的な思いあがりと、その小説の願望充足っぷりがことごとくすごい。たとえば、ひとりインフルエンザに感染し寝込んでしまい、同郷の先輩(すでに仲違いしてた)に「人は冷たし、木枯らしは寒し、これまでの態度は悪かったから看護に来てくれ」と助けを求めるというくだり。それで人のいい事にわざわざやってきて看病してくれた先輩に向かって「貴様は同郷だから出入りを許してやるのだ、我輩の看病をさせてやるのをありがたく思え」と言い放ったらしい。いろんな意味でありえないというか、こんなやつ知り合いにいたら絶対いやだな、というのを超越してむしろ笑いが出てくるようなエピソードだらけです。

だが、この本の面白さは、そういう無茶苦茶なエピソードに寄りかかっただけのものではないですね。様々な人間が関わりあい、あちらこちらで意外な関係が飛び出す島田清次郎の人間関係をうまく描いているのも良いのですが、それに加えて個人的に面白いと思った点がふたつあります。

この本はおおむね7つの章で島田清次郎の人生を描き出していますが、大雑把に2つのパートにわかれるのではないか、と思っています。スキャンダルまでとそれ以降では、筆致もすこし変わるし論点もすこしシフトしてくる。

前半部分は、とにかく様々な資料をもとに半生を浮かび上がらせるということに注力していて、新聞記事などの資料に加えて関係者の回顧録、作家の私小説やエッセイ、島田清次郎自身の随筆や小説内の描写さえも使って、様々な事実を明らかにしていきます。しかし、ぼくはこういう作家の伝記をあまり読まないからかわからないんですが、なんていうか描写が新鮮なんですよね。自身の随筆や小説に脚色が施されているのはもちろんですが、関係者の回顧録にしたところで、清次郎が精神病院に入院してそのまま頓死したということを知った上で書いているものなので「今にして思えば」という気分はどうしても拭えないし、他人の私小説やエッセイとしてもある程度の脚色や創作は含まれてしまう。これと、事実ベースの新聞記事の引用などが併置される。これがなんというか、ちょっと不思議な読書体験だったと思うのですね。虚実ないまぜというのとも違うのですが、こう、虚構から事実を浮かび上がらせ、事実と虚構を併置するというのは、ぼくには新鮮でした。

また、たとえばベストセラーの処女長編『地上』については、出た途端にあちこちで絶賛評であるとか、清次郎の思い上がった言動が知られるに連れて「文壇」から嫌われるようになっていく、といったわかりやすい展開をなぞりつつも、実際にはいろんな考えの人間で構成されている人々である以上、評価や判断基準もわりといろいろである、といった点を忘れず、わかりやすい展開にいわば適宜ブレーキをかけつつまとめていくという手法が、ちょっと独特に思えました。

そして後半部分については、著者である風野さんが現役の精神科医であるということが生きる展開となっています。つまり、思い上がりがこうじて「狂人」と呼ばれるようになり、とくにスキャンダル以降にその傾向が強まった以降の彼の扱われ方、大正時代の精神病院のありようや、当時の病状の認識への見解。また入院中の清次郎の活動を追うことで、彼の病状を推し量ったりもします。スキャンダルから清次郎のことを「DV加害者」と断じ、解説する手さばきの良さや、院内で書かれた文章の分析などには、ただの伝記書籍ではありえない面白さがあります。

読む前は、風野さんっていろんなところでも書評を書いたりしているわけで、精神科医という本業についてはあえて惹句に含める必要があるのかな、と不思議に思っていたのですが、この後半部分を読んで、なるほどと納得した次第。そしてだからこそ、「島田清次郎は本当に天才だったのか、本当に狂人だったのか」という問いかけに対して、読者が納得のできる答えを提示できています。

そしてまた、「中二病のカリスマ」と評したあとがきにも納得感をもって読むことができるわけです。

風野さんは知り合いなのでちょっと褒め気味に書いてしまっているかもしれませんが、おすすめです。

2013-08-27

twitterの不正アカウント市場の調査と対策に関する論文

USENIX Security Symposium で発表されたらしい Trafficking Fraudulent Accounts: The Role of the Underground Market in Twitter Spam and Abuse (PDF) という論文を読みましたが、かなり面白かった。

twitterやFacebook、Googleなどについてニセのアカウントを大量に作って販売している業者がいるらしい。で、実際に twitter のアカウントを販売している業者27社と1万を超えるアカウントのやりとりをすることでその実態を調査しました、彼らのやり口に対する対策について検討しました、という論文です。著者の一部が twitter の中の人であり、twitter の内部情報がないとわからないようなデータにもとづいて業者の傾向なんかも分析していたりしています。

詳細は原文で当たってほしいところなのですが、個人的に面白かったポイントとしては、

  • Facebook や Google のアカウントも売られている。 Phone verified account といって、実際に電話での本人確認を済ませたアカウントというのもあり、それは割高。ウクライナやエストニアの電話番号が紐付いている
  • あまり「同一のIPアドレスから多量のアカウント作成」のような単純な手口は取っていない
  • 登録時のIPアドレス(内部情報)を調査したところ、上位10カ国はインド、ウクライナ、トルコ、タイ、メキシコ、ベトナム、インドネシア、パキスタン、日本、ベラルーシ。日本入るんだ……
  • ただし最多のインドでもたった8.5%、上位10カ国をぜんぶ足しても過半数にならない。それぐらいバラバラ
  • CAPTCHAは機械的に解いている業者と人手でコストをかける業者とがあるっぽい。twitterは同一IPから多数のアカウント作成をするとスロットリングされてCAPTCHAも必要になるとのこと
対策案としては、けっこう後ろ向きで、ようは作成のコストをかけさせるには、といった話。コストがかかればそれだけ単価も上がり、商売としてもやりにくくなる、という理屈みたい。たとえばよくあるような手間をかけさせる手段であるような、メールで確認したり、CAPTCHAをやらせたり、SMSで認証させたり。これらの手法はそれぞれ単価を上げる効果がある。たとえば、メールの場合は、認証するためのメールアドレスというのも、hotmailとかmail.ruとかのアドレスをどこかから購入するので、その分のコストが単価には反映せざるをえない、といったふうに。

論文後半は、登録時に業者っぽいアカウント作成パターンを自動検出してBANする方法について検討しているんだけど、やりとりしていた業者に特有なアカウント名や姓名などのパターンって言っていて、あんまりいいアプローチじゃないんじゃないかなぁ、と思った(このへんはきちんと読んでないので誤解しているかもしれない)。ただ実際にはかなりうまくマッチしたみたいで一瞬、業者を営業停止に追い込んだみたいだけど、2週間ぐらいしたら戻ってしまいました、みたいなことが書いてあったり。いたちごっこの感は拭えないかも。

2013-08-24

『シュガー・ラッシュ』見たけど……

Wreck-It Ralph (邦題『シュガー・ラッシュ』)見ました。 Play Store でレンタルできたので。けど、うーん、まあまあ、かな、という感じ。なんか世間的にはえらい好評っぽかったけど、個人的にはノレなかった。

個人的にあまり気に喰わなかったというかノレなかったのがなぜかというと、ストーリーの根本的なところで、いくら「共演者」とうまくいかなくなったって、本来禁忌とされている「他のゲームに行く」ことをして、そのゲームプレイをぶち壊しにしていて、みたいな冒頭の展開がどうも引っかかったからだ。でしかも、最終的にシュガー・ラッシュの世界が崩壊の危機に瀕するわけだけど、その原因て、ようはお前じゃん、みたいな気分が見ていてずっと残っていて、どうもなんか白けてしまった。

そういうヒネた目で見ると、シナリオには疑問がいくつもある。ラルフはたしかに作中で活躍をするんだけれども、べつにそれと悪役としてのアイデンティティはとくに結びついていない。作中でもFix-it felixの登場人物たちとは別に和解してない。それでこのハッピーエンドってなんなんだろう?とかさ。子供向けのわりにはけっこういろんな展開があって複雑なシナリオだな、って思ったけど、後出し的に考えてみたら、ようはそれってシナリオが練れてないっていうことなんじゃないかなぁ。

もちろん、いいところもいっぱいあるんだよね。やっぱり冒頭の悪役ミーティングはいいなって思うし(とくにザンギエフがいい。っていうかお前悪役だったっけ?という疑問を吹き飛ばすいい立ち位置)、フェリックスとラルフの関係性とかも面白い。見ているときはなんとなく感動するような結末ではあり、つまり映像の力はある。

けどなー、と思ったのでした。

あでも、Fix-it felixの登場キャラたちが(古いゲームなので)カクカク動くところとか、超いいよなー。やっぱり映像の力はある。

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さらにイチャモンをつけるかぎりつけてみるなら、30年間ずっと稼働してるような人気ゲームだったら続編ぐらいできているべきだろうし、やっぱそういう続編となれば、ラルフが主人公になって建物をうまいこと破壊して大切なものを助ける、みたいなのも出てると思うんだよね。

2013-08-20

「男も読める少女まんが」麻生みこと『海月と私』と男の純情



麻生みことの新作『海月と私』(1巻)が出ました。紙版と電子版と、同時に。素晴らしい! もっとやれ!

この作品、非常に「らしい」し、「男も読める少女まんが」ってヤツだなぁとつらつら思うので紹介してみたいと思います。ちなみに、第1話はウェブ上で読めるようになっています。

基本設定はこんなかんじ。父のやっていた片田舎のひなびた旅館を継いだ主人公(もうかなりオッサン)。ところが、父の代から手伝ってくれていた仲居さんがとうとう往生してしまう。もう春にはたたんでしまおう、それまでの間に……ということで仲居を募集したところ、田舎には似合わない妙齢の女性が押しかけるようにやってくる。で、毎回そこで巻き起こる客の恋愛であったり人間模様であったりというのを、この仲居さんが引っ掻き回す、という体裁のコメディタッチな展開です。

この仲居さんのキャラが立っていてイイ感じなんですよね。いっけんか弱く見えても実はけっこうしたたかで、周囲を引っ掻き回しつつ結果的には物事が丸く収まる、といった展開がうまい。一方で主人公のほうは、かつて銀座で板前をしていたという、もう人生を達観したようなおじさんで、できれば客の個人的な問題には立ち入らないようにしたいのだけれども、仲居さんの行動にころっと転がされてしまっていたりする。

第2話のオチがいい感じですね。この後の主人公の愕然とした表情とのギャップが本作を象徴しています。



ところで、この作者、実はこういうタイプのキャラクターを多く描いている気がします。後先かまわず周囲を振り回すタイプの、いっけんか弱く見えるが実はけっこうしたたかに現実を見て生きているような女性キャラクター。たとえば、『そこをなんとか』のらっこちゃんや『Go! ヒロミGo!』のヒロミの姉などがそうですね。また、落ち着き払っているようで案外そうでもないようなひなびたおじさんというキャラクターもけっこう多いように思います。

もちろん、こういうキャラクターのコンビネーションてのは、読者層を念頭に置いているのも確かなんでしょうが(『路地恋花』もそういう話が多かったし……そもそもリア充肉食系男子はどうせこんなものは読むはずもないので)、この作者としてはある種の王道的な組み合わせでもあるし、対比がとても効いている設定だなあ、と読んでいてつくづく思いました。まあ、ぼくが個人的にこういうのが好きだというのもあるんですけど、たぶんきっと。

そして、このキャラ設定は、「男も読める少女まんが」として本作が成り立っているキモでもあるなと思いました。こういう女性キャラクターは内面を描いてしまうと台無しというか、少なくとも違ったストーリーになってしまう。そういうわけで視点人物としてはコンビの片棒をかつぐおっさんが導入されていて、視点人物の内面をきちんと描くことで、男の読者が感情移入できるような仕組みになっている。ただし、手法としては少女まんがらしい手法を採用している、とも言える。もちろん、「男も読める少女まんが」であるから良いとも悪いとも言いがたいのだけれど、そういう分野の作品として、とても成功していると思いました。

先が楽しみです。

2013-08-13

facebookの偽アカウントスパムの問題について

よく話には聞くけれども、僕にも来ました。友達の名前と同じ偽アカウント。比較的ありそうな名前であるので、実際に引っかかってしまった人もちらほらいました。

いい機会なので、この件についていろいろ考えてみました。

偽アカウントとは何か

いろいろ呼び方があるみたいですが、とりあえずここでは「偽アカウント」と呼んでいます。最近はほんと増えている気がするので、「ああ、あれね」とわかった人も多いんじゃないかとおもいますが。

たんに「偽」といえば、もちろん本人ではないということですが、ここでいう場合は(おそらく少数の)業者が何らかの理由で乱造しているアカウント群のことです。男性のしょうもない心理を利用するために、女性の名前を使っていて、多数の男性に無差別に友達申請を行なっていると考えられています。

「彼ら」をおそらく少数であるという推定をしているのは、手口がしだいに変化しているからです。

実際のところ、偽アカウント自体はけっこう前からありました。とはいえ、わかりやすいのは架空の女性を名乗って男性を釣る「釣りアカウント」のようなものだったとおもいます。もっと最近になっての例としては、当初「彼ら」は適当な女性の写真(ネットアイドルや、そういう写真サイトなどから拾ってきたもの)を使っていました。また、同姓同名のアカウントを大量に使っていました(たとえば→この記事は2012年9月でした。同姓同名同写真のまま大量に友達申請していたりしていました。そんな時期もありましたね……)。

今年に入ってから、若干の変化がありました。まず、アイコンに女性の写真を使うのをやめ、アニメや漫画のマスコットキャラなどのプロフィール写真に変わったようでした。また、性別は男性でした。

性別を男性としている理由については、異性への大量の友だち申請がfacebookによって規制されている、ないしはスパムの自動検出に引っかかりやすいからである、という説を目にしましたが、真偽は定かではありません。

また、いくつかの適当なfacebookページをlikeしていました。これも偽物ではない、という効果を高めるための施策であろうと思われます。

名前のバリエーションは増えました。↑のリンク先でも、ほんとうに同姓同名の人から多量のリクエストが来ていたものですが、そういうことはまずなくなりました(数日たったらだいたい忘れているのでかぶっているかもしれませんが)。私見ではありますが、姓と名のかなり大きなリストを持ち、組み合わせているのだろうと思います。

ここ1ヶ月ほどの変化としては、
  • facebookページをlikeするなどの偽装はやめた
  • プロフィール写真に手を入れるのはやめて、男性のデフォルト画像をそのまま使う
  • プロフィール情報を見せないようにして、性別等はわからないようにした
といったところです。おそらく実際に試してみて効果に差がなかったこと、最後の件については「女性の名前だが性別は男性」といった情報も広まっていたし、目に止まりやすかったということがあるのだろうと思います。

もっとも、こういうのはいたちごっこですから、手口は次第に変化していきます。以上は現時点での特徴です。

偽アカウントの友だち申請を許可すると何が問題か

さてそんな偽アカウントですが、何を目的としているのでしょうか。

一説にはアカウント乗っ取りがあると言います。facebookでは友達3人が協力すればアカウントの復帰に必要な手続きが取れる仕組みがあるため、こういう偽アカウントの友だち申請を3回承認しまえば、ほかのメールアドレスに切り替えてパスワード再設定、という組み合わせによってアカウントを奪うことができるというものです。

真偽はさておき、この場合は偽アカウントの問題はけっこう緩和されるといってもいいでしょう。うっかり友達申請しちゃった!といってもすぐアウトなわけではなくて、スリーストライクまではアウトになりません。とはいえ、うっかり間違えたらきちんと解除をしたりしないと、あとあとで問題が残る危険性があります。

もう一つの問題はプロフィール情報の奪取です。

といっても、ようするに「友だちのみ」に見せている情報が筒抜けになってしまう、という話です。自分でfacebookに登録しておいた情報の話ではありますが、プロフィールにはメールアドレスや電話番号、skypeのidなど様々な情報を載せることができます。友達にだけ教えているつもりが、スパマーには筒抜けになってしまっている、ということです。また、友達にタグ付けされたことがあれば写真も閲覧できるでしょう。

さらにいうと、公開範囲を「友達の友達」に設定している場合、自分だけが注意しても効果は特になく、自分の友達の誰かがこういうミスをした場合に流出することになります(たとえば、住んでいる市の名前など、それほどの被害はないかもしれないけれども個人に関わり、一般公開していない情報は、わりとこういう公開範囲にしてたりするかもしれません)。

わたし個人としては、後者の問題のほうが本来の狙いなのではないか、と思っています。思っていますが、いずれにせよこういった2つの問題があるということです。

偽アカウントの問題について僕らは何をすべきか

当たり前の話ですが、見ず知らず、しかもプロフィールに何も書かれてなくてどこの誰かもわからないような人からの友だち申請は断るべきだ、ということです。これは当然の原則です。

しかし、そうは言っても何らかの事情でそういうことに気づかず、間違って承認してしまうということはあります。これはまあ、気をつけて生活をしていてもそういう季節になれば一定の確率で風邪をひく、というようなものです。注意するのは大事ですが、間違いは必ず起こるということです。

間違って行った承認は、直ちに解除するのも大事です。ほっとくと忘れてしまいがちですし、そうなれば偽アカウントが溜まってしまい、乗っ取られる危険性があるかもしれません。また、友だち申請とその受理がどれぐらいの頻度で行われているかにもよりますが、承認をしてから解除するまでの時間が短いほど、個人情報を抜き取られる確率も、量も、(理論的には)下がります。

個人情報について気を使う場合は、電話番号やメールアドレスなど知られたくない情報は入れておかない、といった自衛策もあるかもしれません。電話番号やメールアドレス入れるのは、けっこう便利な場合もあるんですけどね……。

また、「友達の友達」までという公開範囲にはあまり意味はなく、スパマーには筒抜けになっていると考えたほうが良いでしょう。

偽アカウントからの友だち申請については、申請を削除するのが基本ですが、同時にアカウントを報告したほうが良いのではないか、と個人的には思っています。アカウントの報告については「偽アカウントである」という項目があります。本当のところ、絶対確実に偽なのか、というとゼロとは言い切れないよな……と思っていたのですが、実際問題としてあまりにも似た手口のアカウントが多数あるのは確実なので、まあ偽物と言い切って良いと思っています。

facebookのスパム報告の仕組みはわかりませんが、複数の人間から報告があった場合、少なくともアカウントの確認のような手続きはあることだろうと思います。そして、スパマーにとってはきちんとコミュニケーションを取るよりは別な偽アカウントを作ったほうがコストが低いため、たぶんそのまま偽アカウントは停止・削除ということになります。

偶然の一致についてどうすればいいのか

以上の内容は偽アカウントはなんらかの業者が大量作成しているアカウントである、というところがポイントなのであり、実際のところ「なりすまし」かどうかというのはあまり関係はありません。

個人的には、意図的になりすましであることを狙っているわけではない、と思っています。多量の「日本人の姓にありそうな名前リスト」と「日本人女性にありそうな名前リスト」をランダムに組み合わせているのではないか、などと思っています(facebookのプロフィールから、そういう名前リストを取ってきている可能性はあるかも)。

なぜそう思うかというと、知り合いと同姓同名の偽アカウントから友達申請がきたな―、などと思っていたら、本人にも行っていた(笑)ということがわかったからです。なりすましを装うのであれば、少なくとも本人には行かないのではないでしょうか。

ただし、ランダム生成したものから「あれ、コイツfacebookはじめたのかな?」という勘違いが発生することを狙っているのだろう、とぼくは思っています。だから、まあ、なりすましといえばなりすましなのかもしれませんね。誰か一人が勘違いで友達申請を承認してしまうと「あいつが共通の友達なんだからこれは本物だ」という誤解が生じやすく、さらに問題は加速されることでしょう。

ぼくが問題に遭遇した場合、同姓同名の本物のほうとはすでに友達になっていました。なのでいちおう検索して友達として残っていることを確認できました。そうでない場合(しかもfacebookにアカウントを持っているかわからない場合)、確認は非常に困難であろうと思います。

でもまあその場合、いったん待ってみればいいんじゃないでしょうか。もしかしたらほんとうにfacebookのアカウントをつくりたてで、プロフィールが全然ないのかもしれません。でもそうだとすれば、数日もすれば少なくとも写真や、基本的な情報(性別など)は入ってくるはずです。何らかの投稿もするだろうし、なんらかの項目にはlikeしていくはずです。それを見れば本人かどうかの判断はつくでしょう。またもし、相手がそういうことをしない人であったとするならば、facebookのアカウントを作っては見たものの使う予定はないということなので、友達にならなかったとしても、とくになんの支障もないのではないでしょうか。

まあ、本当に気になるなら、別のチャネルから聞いてみれば良いと思いますけどね。メールとか、twitterのDMとか。

それにしても現状はどうにかならないのか

にしたって、現状がわかったところでうんざりさせられるところは変わりません。どうにかならんものでしょうか。

これってスパムメールと一緒だなーとつくづく思ったのは、善意によって成り立っているところに少数の不正利用によって問題が生じているということです(そういえばブルース・シュナイアーの Liars and outliers も似たようなテーマだったな)。あまりにもスパムが過剰になれば、みんなうんざりして使うのをやめたりして、結局スパマーには利益がないのですが、短期的には効果のある戦略だということです。

個人個人で注意しましょう、というのは大事なんですが、根本的な解決策とも言いがたいものがあります。

どうしたものか、どうにかなってくれるとありがたい、のですが、妙案があるわけでもなく、ぐちでおしまいなんですが、どうにかならんものですかねえ。