2013-10-31

三沢陽一『致死量未満の殺人』

致死量未満の殺人

Kindleで読んだ。第3回アガサ・クリスティー賞受賞作、とのこと。

15年前、雪山の山荘で起きた女子大生の毒殺事件。その山荘に滞在していた男のひとりが、殺人の時効直前となるその日の夜に、自分の犯罪を告白しはじめる、という筋立てで、回想となる15年前のエピソードと現在のやりとりを行き来するというもの。

ただ、この展開はふつうかなと思う。読み始めてすぐ、まあでもこれだとふつうこういう展開だよな、となんの根拠もないが思っているような展開どおりに物事が進んでいくので、読んでビックリというようなことにはならない。

が、つまらないということはない。よく書けているし、細かい会話に仕掛けが仕込んであるのはうまい。雪山の山荘に大学生が、という、もはや目にしただけで「うえっ」となるような設定の畳み掛けみたいなのを逆手に取っているのも面白い。個人的には、もうちょっと現代パートの登場人物を増やすなど工夫するといろいろ面白かったんじゃないかという気もするのだが、うーん、わからん。これはこのほうが良いのかもしれない。

パッヘルベルのカノンをはじめとするいくつかの見立てというかカッコつけみたいな部分は、個人的にはちょっと鼻につく。というか、カノンがなにをどう象徴しているのかはイマイチよくわからないし、ぼくはクラシックはよく知らないが、パッヘルベルのカノンて室内楽として演奏され、ふつうは指揮者いないんじゃないか。でも、投稿時のタイトルからすると、そっちのほうが作者的にはキモだったのかなあ。うーん……。

などなど。

星5つをマックスとして星3つぐらいかな。

2013-10-30

GRAVITYの宇宙描写がリアルでヤバイ

映画『GRAVITY』を見ました(邦題は『ゼロ・グラビティ』らしい)。

いやー良いですねこれは。宇宙好きとSFマニアはマスト見るべし。言われなくても見るかもしれないけど。それ以外の人が見ても、危機また危機のダイハード映画としてけっこう楽しめると思う。

とにかく、軌道上の描写がすごい。浮遊感、液体やモノの飛び交うシャトルやステーション内、などなど、とにかく描写がリアルで、「CGが綺麗かつ的確だなー」という印象を与える。またステーション内の狭苦しい感じ、スーツの息苦しい感じ、たまに主人公視点の映像になった時の視界の効かなさも表現されていて、その辺もとにかくリアルだなーって感じ。

などなど、とにかくものすごいリアリティ。宇宙空間描写にしても、デブリが飛んできてはじけたり、いろんなものが絡まったり、なかなか掴まれなかったり、ハッチを開けたら体ごとふっとんだり、などなど、細かい描写もことごとくすごい。

さっそく厳密な正確性についての検証は行われているようで、いくつかストーリーの都合上の正確でないところや、いくつかのミスは発見されているようなんですが、検証しているほうとしても、あげつらうというよりは愛ゆえの調査という雰囲気を感じます。

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ストーリーのほうは単純至極でして、やや未来、ハッブル宇宙望遠鏡を修理中のスペースシャトルが、スペースデブリ群に襲われ、なんとか逃げようと頑張る……というもの。登場人物は主人公となる女性科学者とスペースシャトルミッションのリーダーの二人だけ(ほかのクルーはいきなり全滅しちゃう)と少ないし、とにかく話自体はなにもない(ただ、二人の会話はときどきユーモアがあってちょっと笑っちゃう)。

ただ、ここがこうなっちゃったら逃げるしかないから次はこうする、目的地に近づいたからこうする、みたいに何段階かのステージに分けつつ、どんどんトラブルは起こるし、危機また危機で視聴者に息つく暇を与えないので、長さはあまり感じません。

逆に、よくもまあこんなにトラブルにつぐトラブルばっかり起こるね!という、ダイハード感がちょっとあり、こう、その辺はちょっとリアリティが薄いかなという気がする。スペースデブリも襲来しすぎ。ケスラーシンドロームなのか?

リアリティという面でいうと、冒頭にハッブルが登場するほか、国際宇宙ステーションと中国の宇宙ステーション天宮が登場。ただ、スペースシャトルは2011年のSTS-135をもってミッションは終了してしまったので、そこは完全なフィクションになっている(作中でもミッションナンバーを言ってたけど、確か135よりはちょっと大きな数字を言っていた)。

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まあそんなわけで改めてまとめるとマスト見るべしですよ! 日本での公開は12月だったかな。おすすめ。

2013-10-27

ソニーレンズカメラQX100イイ!( ・∀・)

アメリカでは先月末から売られているソニーのレンズのみカメラ、QX100をようやく入手しました。

amazon.comでも微妙な評価だし、ギズモードでも酷評されていましたが、これは個人的にはかなりヨイ買い物でしたね。面白いです!

何が面白いか。ファインダーとなるデジカメと、レンズが完全に分離されている、というのが面白いです。かなり自由度の高い写真が撮れますし、なんというか、これまでにはなかなかなかったユーザ体験です。目で画面を確認しながら手を動かしていい角度をつくる、とかいう楽しみがある。

喧伝されているようにスマートフォンをドッキングさせてデジカメっぽい外見にするのも可能だし、出先では便利な用法だろうと思いますが、個人的にはこれは付加的なものという気がします。キモは、レンズだけのこいつで撮れる、片手で撮れる、ということかなと思いました。

ファインダーとレンズが分離しているので、自画撮りもこれまでではなかなかありえないようなのが撮れます(ようするにレンズのほうを向いてない写真が撮れる)。いやーこれはオモロイすよ。

本体のみでの撮影も可能で、その場合はあとで吸い出すということになりますが、その場で画像の確認はできないものの、これもわりと楽しい。

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難点は(ギズモードの酷評のポイントにもなっていましたが)携帯電話とのコネクションに時間がかかること。起動させるのは比較的簡単で、ぼくはNFCをサポートしている端末(Nexus4)を持っているので、その場合はNFC同士をタッチさせるだけ。そうするとカメラは自動的に起動し、スマホの方もアプリが自動的に起動して接続してくれます。

ところが、アプリが起動してからコネクションが確立するまでに時間がかかる。とくにwifiを使っている関係で、どうやらすでにwifiを使ってネットに接続している場合や、周囲にwifiが飛び交っているような環境では特に時間がかかるような印象があります。長いと30-40秒ぐらいかかってしまいます。短ければ15-20秒ぐらい? 本当に最短であれば、さほど遅いという感じではないんですがね……。

したがって、公式動画のように、道端で面白いものを見つけてさっと取り出して撮る、ということには、ちょっとならないかなぁと思うわけですね。その場合はスマホとリンクさせず、本体だけで撮るということになるでしょうし、もっと身もふたもないことを言えば携帯電話で撮ったほうがよいかも。携帯電話とリンクさせて撮るのは、レストランとかカフェとか、もしくは展望台みたいな、比較的落ち着いたエリアで、ということになる気がします。

それに、携帯電話の画面で確認していると、カクカクすることはけっこうあります。接続がなんか安定しないことが、まあわりとある。

さらに言うと、アプリもすでに完成形って感じじゃなくて、たとえば撮った写真は携帯電話に保存されるのですが、フォルダが通常のカメラとは違うところなので、SNSアプリから複数枚を一度に選ぶのが難しいとか、まあ、じゃっかんのあれやこれやはないとは言えないところではあります。もっとも、新商品の専用アプリとしては、わりと使い物になるレベルなのはいいな、と思いました。NFCで起動とかの楽さもいい。

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あといちおう明言しておきますが、便利、とか、そういう言葉を使うつもりはないです。既存のデジカメやスマホを置き換えたりするようなものでもない。「スマホと一緒に、デジイチも持ちたいけど……」みたいな人にはおすすめしません。それならデジカメ買えば?って感じ。

でもなんというか、まだ昨日買ったばかりだけど、第一印象は「面白い! 何の役に立つのかわからんけどオモロイ!」ですよ。

以下に、ちょっと撮ってみた写真をいくつかあげてみます。

最初にとってみた写真。アノマノカリスのぬいぐるみ+背景はoctocatのマグ

ファインダー自身を撮ると再帰的な写真が撮れる

町並みの写真。これは本体のみで撮影

これも本体のみで撮影

炭家のランチ親子丼。美味しいです

これも本体のみ写真

同じく本体のみ写真




2013-10-23

松崎有理『代書屋ミクラ』 --- 草食系男子の恋愛未満

代書屋ミクラ

読んでいて、この本はけっきょくどういうジャンルの本なのか、というのがわからなくなってしまい、最後までなんとなく温度差を感じたまま読み終えてしまった。読み終えたあとしばらくして、ようやくこれが恋愛小説だったのではないかと気づいた。

いちおう初出のうち一つはSFのアンソロジーでもあり、架空っぽい設定ではあるんだけれども、ストーリーじたいにはとくに超自然性は何もない。いちおうの設定としては、「出すか出されるか法」と通称される法律により、アカデミックポストの人間は一定期間内に書いた論文のIF値の合計が一定量ないとポストを失う(テニュアがない)という厳しい制度が導入された、というもの。主人公はとある大学の近所に住み、その大学の教員から依頼を受け、データをまとめて論文として仕立てあげる「代書屋」というわけ。

だがまあ、全体的にふわふわして浮ついたメルヘンチックな世界な気がする。主人公のミクラは毎度毎度、何かの拍子で出会う女の子に淡い思いを抱きつつ特に何事もなく、やんわり振られたりほかの男に取られたり実は既婚者だということがわかったりする。とまあそんだけの話。

もともとこの設定とキャラは、著者のデビュー作を含む短篇集『あがり』で登場し、そのときは、ミクラの身辺での日常と、教授から渡された研究テーマが微妙にリンクしたりしながら物語が進んでいくという面白さがあったように思う。が、この本ではそういう部分は消えてしまっている。残ったのは、ミクラの身辺の描写と教授とのやりとりだけであり、具体的には女の子が出てきて何も起きないということ、である。

で、それが面白いのかどうかといえば、まあ面白いといえば面白い気はするのだが、こう何度も続けて読むとなんだかよくわからない。恋愛小説であった場合にはミクラに共感的に読むことになり、そう読めば面白いのかもしれないが、うーん、面白いのかなぁ……。

また著者は、人名など固有名詞以外ではカタカナ語を使わないという不思議なポリシーを持っていて、本書でもそれが貫かれている。「麦酒」に「びーる」と(ひらがなで)ルビを振ったり、「自然」という学術誌(ネイチャーのことと思われる)が出てきたり、一方で、「かけんひ」となぜかひらがなで書き下す。おかげで何か不思議な、現実と遊離した世界になっているような気もするが、これがいいのか悪いのか何の意味もないのか、やっぱりよくわからないのだった。

というわけで、一言で言うと、謎。という感じの本でした。

2013-10-21

data URLの標準エンコードはASCII

なんか数ヶ月に一回ぐらい遭遇してそのたびに「あれっ」て思って検索して「ああそうだった」みたいな気分になるのでメモっとく。

data:text/plain,あいうえお などとすると文字化けする。これはバグでもなんでもない。charsetのデフォルトがASCIIだから。

RFC 2397 section2を読むと、メディアタイプを指定しなかった場合のデフォルトは text/plain;charset=ASCII であり、 "text/plain" だけのように charset の指定を省略できる、とあるので、charsetのデフォルトはASCIIである、と読むのが自然だと思われる。

ChromeのOmniboxでの入力はUTF-8のようなので、上の例であれば、 data:text/plain;charset=UTF8,あいうえお などとすればOK。

ちなみになんで data URL を(Base64などを通さずそんな風に)使っているかというと、ちょっとしたことを書きつける際、ブラウザで新しいタブを開いて data:text/html,<textarea> などとしてテキストエリアを開いたり、ほんとにちょっとしたHTMLの断片を表示・確認するのに使っているから、なのでした。けっこう便利よこれ。おすすめ。

シリコンバレーではあまり見ない日本の食べ物

10月上旬は日本に遊びに帰ってました。美味しいものをいろいろ食べました。

さて、日本ではごくありふれているような食べ物だけど、海外にはあまりない、というものはいっぱいあります。
なので、日頃からあぁこういうのが食いたいなぁ、と悶々としているのか、と思われるかもしれませんが、さすがにそこまでではありません。が、何かの拍子にふと食いたくなったりすることはあります。そういうのを心の中にメモしておいて、たまに日本に帰るときに、欲求を満たすわけです。

ただ、どういうものがあってどういうものがないのか、というのは日本にいると見えづらいかなぁと思いました。ないんじゃないか、と思ってるかもしれないけど、実はけっこうあるんだよ、というものもあるんですよね。
そこまで極端じゃなくても、たとえば味噌汁とかは、自分で作りゃいいんですよね。そんな大層なものでもない。日本風のカレーというのも皆無ではありますし、日本に帰ったらやっぱり一度はくっときたいけど、まあ、作ればいいという話もあります。

なので、個人的な観点からこういうのがないよな、というのをちょっとリストしてみようかなと思いました。言うまでもなくこのネタには極めて地域性の高いので、以下ではシリコンバレーに限定してみます。シリコンバレーは海外といっても日本人の人数もけっこう多いので、けっこういろんな店がありますし、日本食スーパーも充実しているので、その点は有利です。たとえば米や味噌、醤油、豆腐、納豆なんかは日本食スーパーで普通に買えます。

あと、書く前にいちおう念を押しておくと、クオリティの良し悪しは(あんまり)問題視しないことにします。下記では寿司がある、という話をしますが、確かにそのクオリティは日本の高級な寿司屋にはかないません。でもまあ、たとえばすきやばし次郎は日本にも2店舗しかないわけで、そういうところと比較してもあんま意味ないよね。そういうことです。

というわけで、「シリコンバレーではあまり見ない日本の食べ物ランキング」!

1. 卵かけご飯

ご存知かもしれませんが、卵はサルモネラ菌のリスクがあるので、日本の国外ではふつう生では食べません。卵かけご飯は完全にアウト。
とはいえ、実はPasturizedという殺菌された卵も売られていて、そのリスクは日本での生卵と同程度であると言われています。個人的には、あまり試す気にはならないけど。

同じ理由により、生っぽい卵には忌避感を感じる人も多いようです。ロス・アルトスに焼き鳥・親子丼のお店がありますが(ここは美味しい)「当店の丼では卵は半熟で出てくるので、ちゃんと火の通ったものにしたい場合はそういうオーダーをしてください」的な但し書きがあったりします。

(追記:20:30 PDT) シリコンバレー地方版による生卵の安全性に関する記事をFacebookで教えてもらいました。実際には安全なのかもしれませんね。まあ自分も↑の店では半熟卵で親子丼食べてますからねえ。

2. 馬刺し

馬の肉はぜんぜん食えません。アメリカやカナダは文化的に馬の肉を食べることについては強い禁忌感があり、場合によっては違法です(というか、合法の場所もある、ぐらいのかんじ。カリフォルニアでは違法)。なので馬刺しは食えません。

マクドナルドのバーガーに馬の肉が混入していたという事件があって大問題になったこともありました。あれがあそこまで問題になったのは、馬の肉だったからです。ウィキペディアには宗教的な忌避感がある、と書いてありますが、宗教は関係ないはずで、欧州でも馬肉を食べる文化はあります。北米や英国の文化なようです。日本人でも、犬の肉を食べる、と聞くと嫌がる人はかなりいると思いますが、まあそんぐらいの忌避感かなと思っていただければ(ナショナルジオグラフィックの記事が詳しい)。

同じ理由により、ノザキのコンミートもありません(まあ別にいらないか?)

3. 天丼とかかつ丼とか

先ほど書いたように親子丼は美味しい店がありますし、牛丼については吉野家がクパチーノにあるんですが、それ以外の丼物はありません。スーパーのコーナーにあるんだけど、さすがにこれはちょっとね……。
てんやとかつやが海外展開してくれると嬉しいです。

4. お好み焼き

お好み焼きや鉄板焼き、もんじゃ焼きなどのお店は全然ありません。最近、マウンテンビューの居酒屋 Bushido でお好み焼きが出るのを発見して、興奮して頼んでみました。食ったら、ま、こんなもんか、っていうぐらいのものですが(そーゆーもんです)。もんじゃ焼きはみたことないですね。

お好み焼きとか鉄板焼きのお店って、ハワイに行くとけっこうあるんですよね。不思議な地域性です。

ただまぁ、それぐらい食いたきゃ家で作れよ、っていう気もしないでもないですね。

5. 蕎麦とうどん

蕎麦屋はありません。日本料理のお店でも、ざる蕎麦とかみたいなメニューは見かけません。蕎麦といって出てくるときは、何か勘違いしたお店が「焼きそば」というメニューで炒めた蕎麦が出てきてびっくりみたいなパターンが多い。

また、根本的に「コシ」という概念が存在してないようなので、仮に日本料理屋でメニューの一部に蕎麦やうどんがあっても、かなりふにゃふにゃな感じと想像されます。美味しい蕎麦やうどんは、店で食べる望みは捨てたほうが良さげ。完全に日本人向けで日本人がやってるお店ならアリかもしれませんが……。

ただこれも、乾麺や冷凍麺なら日本食スーパーでふつうに手に入るので、そこまで緊急性は高くありません。

ないと思われているかもしれないが案外あるもの

逆に、「これは日本じゃないと無理でしょ!」と思われてそうだけどけっこうあるよ、というタイプ。

1. 居酒屋メニュー

居酒屋、シリコンバレーにいっぱいあります。増えてきました。値段もそんなにやたらと高いわけではなく、けっこういいです。味もメニューもわりとふつうの日本の居酒屋です。

2. 寿司

寿司というとカリフォルニアロール、というイメージの人がいるかもしれませんが、あれはだいぶ違います。まあ、あれはあれで美味しいと思うけど。さらにアメリカの寿司は異常進化していて、ドラゴンロールとかの類を視野に入れると、もはや別のメニューと考えたほうがいいでしょう。
そうじゃなくて普通の寿司。江戸前の。そういうやつ。まあ、あります。たとえばパロアルトにある Jin Sho はスティーブ・ジョブズが通っていたといういわくのあるお店です。行ってみたことがあるけれど、まあふつうに美味しかった。

とはいえ、寿司屋はアメリカンスシがメインの怪しい店も多いので、普通の寿司が食える店の情報は貴重なんですが、ぜんぜんないってほどでもないかなあと思います。

3. 焼き肉

最近クパチーノに牛角ができました。牛角かよ、と思うかもしれないけど、悪くないです。ほかにも評判の日本風焼肉屋といえばJubanとかでしょうか(メンロパークにある)。スタイルにこだわらなければKorean BBQの店はさらにいっぱいあります。

4. ラーメン

ラーメン店も増えてきました。クパチーノにある「Orenchi」(俺ん家)が起爆剤と言われていて、種類もクオリティもここ数年でほんとうに向上しました。

ただなんか、最近スープが薄くなっている気がするんだよなー。こってり濃厚は一部の日本人以外にはウケがよろしくないようで、今後の推移がちょっと気になる品目です。天下一品のベイエリア展開が期待されています(主にぼくによって)。

まとめ

前回の帰国の際に豚組しゃぶ庵での馬しゃぶをリストに入れ忘れてました。次は行きたい。

photo: たまごかけごはん by Masafumi Iwai, 101LAB

2013-10-17

吾妻ひでお『アル中病棟』



失踪日記2 アル中病棟

失踪日記2、ということで、アル中になってしまった吾妻先生のアル中病棟の記録を描いたエッセイ(?)まんが。

『失踪日記』も壮絶な面白さがあったが、今回も面白い。個性豊かすぎるいろんなキャラクターの織りなす不思議な共同生活然としたものが描かれる。なにせ登場人物は(病院側以外は)全員ほんとにアル中なので、ほとんど全員が性格が破綻している。

でまあ、「深刻になりすぎないように」というわけでギャグ漫画の体裁になってるのもあり、とても面白い。登場人物が多いので、そのキャラクターを把握したあとで読み返すとはじめっからこうだった、みたいな発見もある。よくできている。

よくできているといえば、読んでもこういう生活っていいよなー、とは微塵も思わないようにきちんと構成されているのがえらい。よく冗談めかしてアル中と呼ぶようなネタがあるけど、やっぱり根本的には洒落になってない世界なのだよなあと思う。それなのにギャグとして成立しているのが、あらためてすごい。

未読なら『失踪日記』もいっしょに。

2013-10-14

日本に帰るときのSIM

休暇で日本に帰っているわけですが、日本に短期的に滞在する際、携帯端末の通信をどうしたものか、という問題があります。

簡単に調べた限りにおいては、これ!という決定打はいまだに存在しないようです。まず、多くの端末は契約が必要であり、海外在住者には便利ではありません。また、滞在者向けの端末や契約もあるにはあるようですが、どうも通話専用のものばかりみたいです。いまどき通話のために携帯電話を持つことなんてあるんでしょうかね。

人によっては日本の携帯電話の契約を維持している人もいるようです(毎月基本料を払っておいて、帰るときにだけ使う)。しかしそれもまたしんどい。折よくT-mobileがグローバルな無料ローミングサービスを発表しました。これも良さそうですが、通信速度が128kbpsというのは、さすがに現代的には厳しいラインな気がします。

今回は b-mobile の滞在者向けのSIMを使いました(1GB prepaidのほう)。おそらく現時点ではこれが一番良いと思います。

使いはじめる際の問題

ドコモの MVNO 事業者はけっこういっぱいあるようなのですが、調べてみた限り、初期費用+月額という料金体系の業者が多いようです。1ヶ月だけスポット的に使いたいという用途には向いていません。

b-mobile はSIMを購入すればそれがそのまま使える、というもので、短期滞在者には都合が良い。英語ページを作って頑張っている上記リンクは、 1GB 使いきり、または14日間のみ使い放題というもので、SIMを挿せば(モバイルネットワークの設定をすると)使えるようになります。

また、追加料金を払うと空港でSIMを受け取ることができます。空港の郵便局に局留めしておくというもので、そこまで行って受け取ることになります。成田空港の場合、郵便局は到着ロビーからはけっこう遠い(到着ロビーは1Fで、郵便局は出発ロビーのある4Fの脇のモールの中にある)のが難点ですが、ほかのSIMに比べれば受取は圧倒的に楽だといえるでしょう。

ちなみに、ぼくもまったく気づいてませんでしたが、1GBプランも実は14日で失効します。なので、この2つのプランはどちらも14日プランであり、違いは「1GB使いきりか、データ使い放題のかわりに帯域制限を受けるか」ということになります。14日より長い滞在の場合は困ってしまうと思いますが、1ヶ月のSIMを買うべきなんですかね……。b-mobileはプランが多数ありすぎて、どれを選べばいいのかは正直よくわかりません。

データ通信およびカバレッジの問題

さて、1GB使いきりプランの場合はフルの帯域が使えるということになっています。ちょっとspeedtestアプリで計測したところ、下り0.93MB、上り0.4MBといったところです。速くはないですが、まあこんなもんかな。ふだんLTEな人からするとちょっと遅すぎかもしれませんが。ぼくは遅くて困ると思ったことはありませんでした。

エリアカバレッジについては、特に気づくほど狭くはありません。実際、直島に遊びに行きましたが、現地ではテザリングをしてたぐらいです(ホテルの wifi が最悪で、テザリングのほうが良かったので)。

ただし、通話機能の関係上(後述)、携帯電話のアンテナ表示が無意味になっているため、ほんとうのところどれぐらい通信が安定しているのかはよくわかりません。変なところや地下の奥まった場所で使ったりはしていないので、きちんとした測定結果ではありません。

通信量1GBというのは(テザリングなどの)無茶をしなければかなり使える量だと思います。ですが、思いきり使えるというものでもありません。ぼくの場合は滞在中の部屋にも wifi があったし、スターバックスで wifi を節約するなどのせこい手をそれなりに使っています。

ちなみにぼくは14日間使って、使用量は800MB程度でした。内訳は端末情報によると Google+ 180MB、Chrome 109MB、テザリング 87MB、facebook + メッセージが85MB、地図 77MB、Play Store 73MBといったところ。Play Storeは自動更新の設定を直し忘れていたので無駄に消費してしまいました。G+が多いのは、ぼくが比較的よく使っていて、チェックインや画像のアップロードに使っているからなので、主要なものがこれぐらいという目安で考えていただければと思います。

通話の問題

b-mobile をはじめとして、データ通信が可能なプリペイドSIMは、なぜか通話の機能が全くありません。そのため、アンテナ表示は常に圏外になっています(が、通信はできる)。

まぁ実際のところ、滞在中に電話をかける必要はほとんどないと思います。ですが、絶対にないとは言いきれない(レストランやホテル、交通などへの問い合わせなど)。ぼくは今回は Skype を使いました。 Skype を使えばふつうの電話番号にも電話をかけることができます。実際に使ってみましたが、特に問題を感じませんでした。金額は1分毎に3.22円(Skypeのサイト内で検索のこと)。

ただし、この方法では電話を受けることはできません。Skypeは月額料金を払うことで電話番号をもらえるんですが、滞在用にこれを使うのは厳しい。ぼくは今回はそれについては諦めることにして、連絡はハングアウトなりfacebookメッセンジャーなりSkypeなりにしてもらう、ということにしました。まあ、わりとなんとかなります。ただし、電話をかけて問い合わせた場合に、相手から折り返し連絡をもらう、ということができません。

まとめ

b-mobileはわりとなんとかなります。使用感が素晴らしいということはないし、いろいろ面倒もありますが、いちおう解決可能なレベルです。個人的には、現時点では一番マシだと思います。

しかし、もうちょっと旅行者にとって使いやすいSIMがあるといいんですけど、どうにかなりませんかね?

2013-10-13

南信長『マンガの食卓』


南信長『マンガの食卓』

これは良い本でした。

古今東西のまんがのうち、料理まんがや食事の場面の出てくるまんがを取り上げ、どういう表現が使われているかを紹介しつくすブックガイド的なエッセイ本。最初の方は雑誌の連載コラムみたいな小気味いいテンポのエッセイといった雰囲気だが(あとがきからすると実際そうだったっぽい)、後半はもうちょっと論評的なものも含まれる。

この種の本としては、それなりに古いまんがも含みつつ、かなり新しいものもカバーするなど非常に視野が広く、また個別の作家についても、たとえば土山しげるを「時折ハッとするような擬音を使うことがあり、やはりタダ者ではないと思わせる」と評するなど、それなりのマニアでも納得できる観点が盛り込まれている。

大友克洋や手塚治虫は食事表現が淡白であったということや、食事という観点からワンピースとドラゴンボールを比較するなど、面白い話も多い。

が……それだけだ、といえばそれだけになっているところが、惜しいといえば惜しい。

本全体として見なおした場合の印象は、各論に終始しているということになる。料理という切り口はあまりにも広く、けっきょく何が焦点の本だったのかがはっきりしない。このため、読み終わってもトリビア的な細部から立ち上がってくるようなものがなく、その結果としてなんとなく掘り下げが足りないように思えてしまうような気がしないでもない。

紹介されている作品点数を大胆に減らして、より掘り下げた本にしたほうが、そういう面では良かったのかも、という気はする。というか、ぼく個人はそういう本のほうが面白く読めたのかも、と思う。

とはいえ、点数の多さ、視野の広さ、古典と新作のバランスなど、ブックガイドとしてはレベルが高い。