麻生みことの新作『海月と私』(1巻)が出ました。紙版と電子版と、同時に。素晴らしい! もっとやれ!
この作品、非常に「らしい」し、「男も読める少女まんが」ってヤツだなぁとつらつら思うので紹介してみたいと思います。ちなみに、第1話はウェブ上で読めるようになっています。
基本設定はこんなかんじ。父のやっていた片田舎のひなびた旅館を継いだ主人公(もうかなりオッサン)。ところが、父の代から手伝ってくれていた仲居さんがとうとう往生してしまう。もう春にはたたんでしまおう、それまでの間に……ということで仲居を募集したところ、田舎には似合わない妙齢の女性が押しかけるようにやってくる。で、毎回そこで巻き起こる客の恋愛であったり人間模様であったりというのを、この仲居さんが引っ掻き回す、という体裁のコメディタッチな展開です。
この仲居さんのキャラが立っていてイイ感じなんですよね。いっけんか弱く見えても実はけっこうしたたかで、周囲を引っ掻き回しつつ結果的には物事が丸く収まる、といった展開がうまい。一方で主人公のほうは、かつて銀座で板前をしていたという、もう人生を達観したようなおじさんで、できれば客の個人的な問題には立ち入らないようにしたいのだけれども、仲居さんの行動にころっと転がされてしまっていたりする。
第2話のオチがいい感じですね。この後の主人公の愕然とした表情とのギャップが本作を象徴しています。
ところで、この作者、実はこういうタイプのキャラクターを多く描いている気がします。後先かまわず周囲を振り回すタイプの、いっけんか弱く見えるが実はけっこうしたたかに現実を見て生きているような女性キャラクター。たとえば、『そこをなんとか』のらっこちゃんや『Go! ヒロミGo!』のヒロミの姉などがそうですね。また、落ち着き払っているようで案外そうでもないようなひなびたおじさんというキャラクターもけっこう多いように思います。
もちろん、こういうキャラクターのコンビネーションてのは、読者層を念頭に置いているのも確かなんでしょうが(『路地恋花』もそういう話が多かったし……そもそもリア充肉食系男子はどうせこんなものは読むはずもないので)、この作者としてはある種の王道的な組み合わせでもあるし、対比がとても効いている設定だなあ、と読んでいてつくづく思いました。まあ、ぼくが個人的にこういうのが好きだというのもあるんですけど、たぶんきっと。
そして、このキャラ設定は、「男も読める少女まんが」として本作が成り立っているキモでもあるなと思いました。こういう女性キャラクターは内面を描いてしまうと台無しというか、少なくとも違ったストーリーになってしまう。そういうわけで視点人物としてはコンビの片棒をかつぐおっさんが導入されていて、視点人物の内面をきちんと描くことで、男の読者が感情移入できるような仕組みになっている。ただし、手法としては少女まんがらしい手法を採用している、とも言える。もちろん、「男も読める少女まんが」であるから良いとも悪いとも言いがたいのだけれど、そういう分野の作品として、とても成功していると思いました。
先が楽しみです。
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