2014-07-01

白夜のラマダン

ラマダンが始まったらしい。今年は6月28日から7月27日だそうだ。ぼくはイスラム教にはなんの縁もないので、へえっていうぐらいのものだが。

ただ、ラマダンといえば日中の断食だというぐらいは知っている。厳密には日の出から日没までの食事をしないということであって、日が暮れたらけっこういっぱい食べるのだと聞いたことはある。などということをウィキペディアで再確認しつつ、しかし、サンフランシスコ・ベイエリア近辺では、夏はけっこう日が長くて、日が落ちるのは9時を過ぎていたりするし、ラマダンといっても大変だろうな、などとうすぼんやり思いながら晩飯を食ったのであった。

でも、だとしたら、もっと北に行ったらどうなるのだろう。最終的には白夜のエリアに入ってしまうと、ある期間、日はまったく落ちなくなる。一ヶ月ものあいだ、まったく何も食えないと本当に餓死してしまうので、何らかのルールがあるのだろうとは思うが、さて、どうなっているのか?

冗談みたいな話だなと思うが、誰も書いていないということはないだろうと検索してみたら、The Atlanticの思いのほか真面目な記事が見つかった(2013年の記事)→ How to Fast for Ramadan in the Arctic, Where the Sun Doesn't Set

ただしくはリンク先を読んでほしいところだが、面白いと思ったのは、これが実はここ数年で顕在化した新しい問題だということだ。

なぜか? なぜなら、イスラム暦は太陰暦だからだ。

ラマダンはイスラム暦の月の名前なので、イスラム暦に対して毎年いつも同じ月にラマダンの行を行う。が、イスラム暦は閏月などの調整を持たない完全な太陰暦なので、太陽暦から見ると、毎年少しずつ時期がずれることになる。太陽暦は季節に一致するから、ラマダンが行われる季節も少しずつ移りゆくことになる。で、その周期はおよそ30年ちょっとで一周する。

前回(太陽暦から見て)7月にラマダンがあったのはおおよそ30年前、1980年代のことだった。そのころ、イスラム教徒の分布は、経度はともかく緯度的にはそれほどの広がりはなかった。ゼロではないかもしれないが、無視できるほどの少なさであるし、個別になんとか対処したりしていたのだろう。でも今はそれなりに広がっている。記事で取り上げられているノルウェー北部のトロムソはソマリアからの難民が多く、イスラム教徒の人口はおよそ1000人という。コミュニティの合意が必要な規模の人数だ。

記事によれば(2013年は)トロムソのイスラム教徒コミュニティでは、メッカのタイムスケジュールを使うことにしたのだそうだ。つまり、ある日のメッカの日の出が(メッカのタイムゾーンで)朝5時だとすると、トロムソの人々は(ノルウェー時間で)朝5時になったら食事をしないことにする。メッカの日没が7:07であれば、ノルウェー時間で夜7:07にモスクに集まって食事をとるのだそうだ。

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