2015-01-07

ウィリアム・ソウルゼンバーグ『ねずみに支配された島』



ウィリアム・ソウルゼンバーグ『ネズミに支配された島

面白かったけれど、『捕食者なき世界』ほどの面白さはないかな、と思いました。著者のソウルゼンバーグはこういった著書など生態系に関するテーマに強い科学ジャーナリスト。

本書の指摘は単純明快。ねずみに代表される害獣によって多くの固有種が絶滅の危機に瀕しています。害獣駆除の試みが始まって、いちおう成功を収めつつあります。以上。

著者も指摘するように、「野生動物の絶滅」とかというと、多くの人が思い浮かべるのは、毛皮や角などを求めて(多くは西洋文明の)人間によって根絶させられるというものかも。ですが、多くの絶滅は孤立した島の固有種に対して起こり、それは西洋文明とはあまり関係なく、人間の移住や、それにともなうねずみなどの害獣によって引き起こされると著者は書く。

主な舞台はニュージーランドとアリューシャン列島。ニュージーランドの飛べない鳥カカポやアリューシャン列島の海鳥たちはねずみによって絶滅の危機に瀕しているとされます。ねずみは空腹でなくても獲物を狩れるうちには狩ってしまう習性があり(過剰な分はためこんで腐らせてしまったりする)、そういう獲物が生態系に存在しなかった島では少数であってもおそるべき効果を発揮してしまうとか。あるところではネコが、またあるところではキツネが、ヒツジやブタが、生態系を崩壊させてしまう。

イースター島の文明崩壊、ヤシの木を刈りつくしてしまったのも、住民がみずからすべて伐採したというジャレド・ダイヤモンドの説(『文明崩壊』)よりも、住民が持ち込んだねずみにむしろ原因があることが示唆されるのだとか。

こういう問題への対抗策は、そういう外来種の害獣たちを一匹残らず駆除すること。駆除というのはつまり、ねずみの場合は毒を含んだ餌をばらまいて殺し尽くすこと。ねこなら罠や銃で狩り尽くすことを意味します。ですが多くが絶海の孤島であるこうした島において、駆除のプロジェクトは簡単なものではありません。ここにねずみ根絶に向けた一大プロジェクトが発足するわけですが……

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著者はどちらかといえば野生動物の保全という目的に疑問を抱いていないけれども、個人的にはいささか割り切れない面もあります。野生動物というのはねずみがいなくても、勝手に滅んでいたものかもしれません。その地に適応してしまったねずみを殺すのは、ねずみがありふれた種であり、よそにいくらでもいるからですが、それは命の比較なのでは。ねずみを殺すにしても、もっと人道的な方法はないのだろうか……などなどの指摘は本書でも一応取り扱われています。ほかにも、複雑な因果関係がきちんと議論されないまま、動物を根絶させるという点から反対運動が起こるということもあるようで、ブタを根絶させようとして反対運動が起こった事例なども紹介されています。

また、毒餌によって根絶させるという場合、ねずみだけがターゲットになるともかぎりません。毒餌はほかにも効いてしまうでしょうし、ねずみの死骸を食べた野生動物が犠牲になるケースもあるのだとか。複雑な生態系の話なので、問題はそうそう簡単でもありません。

でも、そういった問題を抱えつつも、総合的にはいろんな問題が実際に解決されているのは事実であり、ともかくも先に進めていく、というのが本書の結末であり、ある種感動的ではあります。

個人的に前作より劣るかなと思ったのは、「害獣によって生態系が破壊される」というテーマが、『捕食者なき世界』のテーマほどの意外性がなく、予想よりはるかにすごいとはいえ「まあそうなんだろうな」というものであることと、毒餌のような対応策の単純さにあるのかもしれません。