星を創る者たち (NOVAコレクション)
大森望編のアンソロジーシリーズ《NOVA》で掲載されていた「宇宙土木シリーズ」3本に加え、25年ほど前に《奇想天外》誌で書かれていた3編の改稿、さらに完結編となる書下ろし「星を創る者たち」を足した連作短編集。
ざっくりとしたあらすじを書けば、宇宙空間のあちこちで行われる大規模土木工事がいろんな事件・事故に遭遇し、その場の人々が問題に対処していく、というもの。
だが、SFとしての新味というか、斬新さのようなものはない。最初の「コペルニクス隧道」こそ、月の砂という舞台に立脚したガジェットがでてくるものの、この設定はかなり『渇きの海』オマージュであるように思う。それ以外の作品でも、舞台は火星や水星、金星、などなどいろいろと変わるし、起こる事件は大きかったりするのだが、物語や設定じたいは比較的地味であり、すごく斬新に、宇宙であることがポイントとなるような物語には、じつはあまりなっていない。
この本の妙味というべきところはむしろ、巨大プロジェクト系SFというかインサイダーSFというか、そういった部分であろうと思う。時代が未来で舞台が宇宙であっても、巨大プロジェクトを運用する巨大組織のなかであがきながらなんとか物事を先に進めていく人々の物語、として読んだ。
わかりやすい組織対個のような対立構造でもなく、単純にみんなが集まってチームになるのでもなく、巨大な組織とそのなかである個人、というものを描いたSFって最近あんまり多くないかもな、だがまあ良いものだ、と本書を読んで改めて思った。
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などと思って読んでいると、ラスト「星を創る者たち」で完全に足元をひっくり返される感じを味わうのだが……!
正直なことを言って、この展開でこのラストはねえよ、とちょっと思うぐらい急激に「エスエフ」していてすごい。この本のオチをこうする必然性はあるのか?とかいう疑問はあるが、その疑問も押し切るレベル。
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