桜坂洋の『All You Need Is Kill』をベースにしたというハリウッド映画、Edge of Tomorrow (→日本の公式サイト)を見てきました。
話としては別物ですが、これはこれでなかなか良かったと思います。
基本的な設定やアイデアの核を流用しながらも、まったくイチからストーリーや設定を再構築した作品といった印象で、ほんとうの意味でも別物。細かい設定なども全然ちがいます。
その核となる部分というのは、「正体不明のエイリアンに襲われて人類は押されている状態」「ほとんど新兵状態の主人公がいきなり前線に送り込まれる」「エイリアンに由来するとある理由により主人公だけが、死ぬと前日に戻り時間がループする」「同じ日を繰り返すうちに主人公は次第に熟練していく」「人類側のエース級の兵にリタという女性がいて、彼女はループの謎を解く鍵をにぎっている」とまあこんなもん。あと登場人物の名前は(主人公以外は)わりと原作そのままかな。
それ以外の部分は全部違うといったほうが適切。とくに「どういう機序によって時間のループが発生するか」「ループから脱出する方法」などが大幅に違います。したがって結末も全く異なるものとなっています。
でもまあ見ていて、これでも良いのかなという気がしてきました。見る前に『All you Need Is Kill』を再読したんですが、なんというかこう、あんまし映画向きというわけでもない(部分も多々ある)よね。原作に忠実にしつつ適宜改変を加えるよりは、基本設定から再構成するという判断でもまあ良かったんじゃないかな、という気もします。原作の映像化も、それはそれで見たかったという気もするけれど……。
映画としては、ひとつにはミリタリーものという側面があって、いきなり戦場に放り込まれた主人公が右往左往していくなか、周囲でもどんどん人が死んでいく過酷なシーンの繰り返しというものがあります。繰り返していくなかで次第に熟練していく主人公がだんだん人を助けられるようになっていくといった展開も面白い。
もうひとつ、主人公だけが同じ時間を繰り返すために主人公はある種の予知能力的なものを持っていることにあり、それを流用していろんなことを試みるわけですが、このセリフ回しや展開でちょっと笑っちゃうところも多々。ループものの面白さはかなり生かされていると思います。
難点を挙げるとすると、エンディングはもうひとつ納得いかないのと、やっぱり冒頭、軍の広報みたいなことをやっている少佐がいきなり三等兵に降格されて出撃という展開がちょっと無理めな気がするんですよね。原作だとただの新兵なところが少佐って……まあトム・クルーズの顔で新兵というのはどうしても無理があるだろというのは確かなんですが(笑)。
タイトル Edge of Tomorrow というのは、ストーリーを完全に変えたものとしては良いと思います。All You Need Is Kill というタイトルは原作のあのラストの展開と結末を踏まえないとつかないタイトルなので。
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ちなみに、なんでまた日本人のライトノベルがハリウッド映画化されているかという話なんですが、日本のSFを英語に翻訳してアメリカなどで売るという出版社がいくつかあり、そこで英訳されていたという下地がありました。桜坂洋の代表作は『よくわかる現代魔法』シリーズかと思われますが、本作が選ばれたのは長いシリーズでないということと、たぶん英語圏でも受けそうな内容だというあたりでしょうか。それがあたったのは確かですね。原作そのままの映画にはできないまでも映画にしたくなるような設定ではあった、ということでしょうか。
# いま見たらグラフィック・ノベルにもなってたのね。でもデザインがダサすぎ(笑)
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