『ヴィンランド・サガ』[13]
ついにトルフィンがレイフと会い、ヴィンランド行きを決意する巻。いっぽうでクヌート王は軍勢を率い、ケティルの農場側とついに戦争に突入する。
本巻でついにトルフィンは父の意を継いだ戦士として覚醒し、争いから隔絶した楽土を作るということでヴィンランド行きを決意する。このシーンは感動的であるものの、同じく戦いを体験して悲観から自力での地上の楽土を作ることを決意したクヌート王とかぶる。というわけで、ようやく北海帝国のクヌート王とトルフィンという近い時代の人物をうまく組み合わせて対比させるというこころみがわかってきて、物語が重層的になってきた。
トルフィンにせよクヌートにせよ、この作品のキャラクターたちはみな歴史上の人物であり、ヴィンランドの入植や北海帝国の行く末については実は決まっている。もちろん作品自体は歴史ものというよりはフィクションであると思われ、物語の内容は様々な歴史的事実やトルフィンについて描いたサガのなかみなどとは、おそらく完全に整合することを目的としていないと思われる。とはいえ、細部は異なったとしても大筋の流れを変えることはないだろう。そんでもって、彼らの決意は、残念ながら、意図したような結果を残さない。トルフィンの入植は最終的には放棄されることになるし、クヌート王は41歳で死に、北海帝国はその後すぐに崩壊してしまう。
が、それがどう語られるのか、というは今後の楽しみだ。
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