2013-12-17

最近読んだ科学一般書2本。『右利きのヘビ仮説』『スズメ つかず・はなれず・二千年』。好対照

細将貴『右利きのヘビ仮説』(東海大学出版会)は、タイトルに惹かれるものがあって買った。ヘビで右利きって?とだれでも思う、よね?

実際には、カタツムリを食べるヘビと、カタツムリの右巻き・左巻きの話。あまりネタバレしすぎないように書くと(すでにしている気もするけど)ヘビの行動特性とカタツムリの独特な繁殖方式により、独特の共進化がうまれる、というもので、この話が実に面白い。読むとなるほど!と思う。生物系の学問にはまったくシロウトの自分にとっても、感心する内容が多かった。

ただ、残念ながら、本としての構成には疑問が残る。というのは、研究の話よりも、著者の研究者としての苦労話が多いからだ。

どこそこに行ってなんという人にあってこの人のおかげでこういう研究ができた、ここに行ったらこのフィールドワークがこれぐらい大変だった、実験をしようとしたら機材が高かった、実験してみたらこの機材は結局いらなかった、そういったエピソードがとにかく多い。著者も筆が達者で、こういうエピソードが面白くないかというと、そこそこ面白い。

でも、ぼくがこの本で読もうと思っているのは研究テーマの中身であって、研究者の苦労話ではないなあ、と読んでいてずっと思った。苦労話もちょびっと入っているとエッセンスとして効いてくると思うけれど、この本は苦労話パートが多すぎるかなと思う。本人として思い入れがあるのは、もちろん苦労したところなので、そこばっかり書いてしまう現象もよくわかるんだけどねえ……。

分量バランスの問題なので、大学出版なので編集パワーが強くなかったからかもしれないし、いっそ誰かサイエンスライターに書いてもらったほうが良かったかも、と思った。

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そういう意味では、三上修『スズメ つかず・はなれず・二千年』(岩波科学ライブラリー)はとても好対照をなしていた本だと言える。

スズメなんて超身近なありふれた鳥だ。裏表紙にも「ザ・普通の鳥」と書いてある。ところが、よく知っているようでいて実はけっこう曖昧なイメージのある鳥でもある。わかっていないことも実はいくらでもある。たとえば、スズメの巣はどこにある?とか。この本は、そういったことをユーモラスに描く。とりのなん子の挿絵や、著者の配偶者の描くイラストも、わりとふんわかしていてファンシー。

さらに、生物学的な要素だけではなく、日本人がスズメをどんなふうに見てきたかなど、人文科学的な側面にもちょっとだけ踏み込む。

スズメが減っているか減っていないのか?という話についても、きちんと説明してくれる。どれだけのことがわかっていて、過去どういう統計があって、そこからどういう推定をして、どういうことが言えるのか、ということを、逃げずに、概論だけは描く。そして大雑把に減っている、という結論を伝える。

一冊まるごとちゃんとスズメの話だけで、きちんと内容がもっている。題材はありふれていて、「なるほど!」というような強い感情は読んでいても出てこないけれど、ずーっとじんわり面白く、話題の尽きない感があるのだ。