Ms. Marvel Volume 1: No Normal
なんかの記事で見かけて面白そうだったので買ってみたが、なかなか良かった。
アメコミヒーローシリーズの『ミス・マーベル』が4代目になって新しくなった第1巻なんですが、大きな特徴は主人公がパキスタン系でムスリムの家庭の女の子であること。
カマラ・カーンはジャージーシティに住む16歳のふつうの女の子。ムスリムの家庭ではあるけれど、彼女じたいは伝統や慣習よりはアヴェンジャーズなどのコミックが好き(ファンフィクを書いたりしてる)。ただ、厳格な両親やムスリムとしての生活を受け入れた兄はそういうことに理解がないし、学校の白人の友達たちからは少し疎外感を味わっていて、週末のムスリム系の学校(補習校?)でも厳しい先生とはいまひとつそりがあってない。
ある日、親のいいつけを破って友達に誘われて夜のパーティに行った帰り、不思議な霧の中で彼女は幻覚を見、自分の姿形を自由に変形させる超常能力を得る(わけわからんなーと思ったけど、この霧じたいもInhumanityというマーベルユニバース全体のクロスオーバーシリーズの設定らしい)。幻覚に見えたミス・マーベル(初代)を見ながら「あなたみたいになりたい」と思った彼女は、ほんとうにそういう姿形に変化し、人助けをしたことから、人々のあいだにミス・マーベルの都市伝説が生まれる……といったものがオリジン。
褐色の肌で黒髪なパキスタン系のアメリカ人、しかもムスリムというスーパーヒロインはそれだけでもセンセーショナルな題材だし(マーヴェル・コミックスではタイトル持ちヒーローでムスリムは初とのこと)、白人リア充たちにちょっと憧れつつ彼らのようにはなれないことを思い知らされたり、なかなか攻めたテーマ設定にも思える。
ただ実際のところは、厳しい親の抑圧と自己の関係、理解のない家族や友だちとの人間関係、学校でもどちらかといえばスクールカースト下位なキャラクターが突然スーパーヒロインになるといった設定など、戦うヒロインものとしては比較的普遍的な(言い方をかえるとわりとふつうの)テーマを描いていて、そこが主眼なのかなという印象。ムスリムといった彩りはこうしたテーマとわかちがたく結びついているけれども、そこだけをセンセーショナルに取り上げた作品ではないなという感じ。
アートワークもなかなか良くて、アメコミみたいなガチムチな感じから離れて線もおとなしめ、マンガっぽい表現もあるし、特殊能力として体のあちこちが変化したりするのがディフォルメぽい演出になっていたりもして、良い感じです。
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