2013-10-13

南信長『マンガの食卓』


南信長『マンガの食卓』

これは良い本でした。

古今東西のまんがのうち、料理まんがや食事の場面の出てくるまんがを取り上げ、どういう表現が使われているかを紹介しつくすブックガイド的なエッセイ本。最初の方は雑誌の連載コラムみたいな小気味いいテンポのエッセイといった雰囲気だが(あとがきからすると実際そうだったっぽい)、後半はもうちょっと論評的なものも含まれる。

この種の本としては、それなりに古いまんがも含みつつ、かなり新しいものもカバーするなど非常に視野が広く、また個別の作家についても、たとえば土山しげるを「時折ハッとするような擬音を使うことがあり、やはりタダ者ではないと思わせる」と評するなど、それなりのマニアでも納得できる観点が盛り込まれている。

大友克洋や手塚治虫は食事表現が淡白であったということや、食事という観点からワンピースとドラゴンボールを比較するなど、面白い話も多い。

が……それだけだ、といえばそれだけになっているところが、惜しいといえば惜しい。

本全体として見なおした場合の印象は、各論に終始しているということになる。料理という切り口はあまりにも広く、けっきょく何が焦点の本だったのかがはっきりしない。このため、読み終わってもトリビア的な細部から立ち上がってくるようなものがなく、その結果としてなんとなく掘り下げが足りないように思えてしまうような気がしないでもない。

紹介されている作品点数を大胆に減らして、より掘り下げた本にしたほうが、そういう面では良かったのかも、という気はする。というか、ぼく個人はそういう本のほうが面白く読めたのかも、と思う。

とはいえ、点数の多さ、視野の広さ、古典と新作のバランスなど、ブックガイドとしてはレベルが高い。